2012年2月26日

『対訳 イェイツ詩集』

イェイツの詩を読みたいと思って最初に手にした本。
若い頃から晩年までの詩集からバランスよくピックアップされており、
訳も現代的で親しみやすい。

イェイツについて知りたい人が最初に手にするのに適した本ではないでしょうか。


『ダブリナーズ』 ジェイムズ・ジョイス

アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスによる短篇集です。

『ダブリン市民』というタイトルで出ていたものを新訳するにあたり、タイトルも原題である『ダブリナーズ』をそのまま使用しています。

ダブリンのさまざまな老若男女が出てきて、それぞれの生活が描かれています。

文章は、晦渋ではないにしても、決して平易なものではありません。

言葉に対するこだわりが強い作家による短篇なので、その文章が何を意味しているのか不可解な箇所が所々に出てきます。

折に触れて再読するのがいいかもしれないです。

「姉妹」
「出会い」
「アラビー」
「エヴリン」
「カーレースが終って」
「二人の伊達男」
「下宿屋」
「小さな雲」
「写し」
「土くれ」
「痛ましい事故」
「委員会室の蔦の日」
「母親」
「恩寵」
「死せるものたち」




2012年2月12日

The Second Coming



Turning and turning in the widening gyre
The falcon cannot hear the falconer;
Things fall apart; the centre cannot hold;
Mere anarchy is loosed upon the world,
The blood-dimmed tide is loosed, and everywhere
The ceremony of innocence is drowned;
The best lack all conviction, while the worst
Are full of passionate intensity.
Surely some revelation is at hand;
Surely the Second Coming is at hand.
The Second Coming! Hardly are those words out
When a vast image out of Spiritus Mundi
Troubles my sight: somewhere in the sands of the desert
A shape with lion body and the head of a man,
A gaze blank and pitiless as the sun,
Is moving its slow thighs, while all about it
Reel shadows of the indignant desert birds.
The darkness drops again; but now I know
That twenty centuries of stony sleep
were vexed to nightmare by a rocking cradle,
And what rough beast, its hour come round at last,
Slouches towards Bethlehem to be born?

『装飾する魂―日本の文様芸術』 鶴岡真弓

ケルト装飾についての著作のある方による、日本の装飾についての読み物。
日本の装飾をいくつかのテーマごとに分類し、解説していく。
何気なく見ていた文様が意味と歴史を持つことに気付かせてくれる本。
エッセイのような感覚で読みやすい。

装飾する魂―日本の文様芸術
装飾する魂―日本の文様芸術

2012年2月4日

『ディフェンス』ウラジーミル・ナボコフ

ルージンは幼い頃にチェスと出会い、成長してチェス・プレイヤーとなっていきます。
彼には、チェスは一流だがそれ以外の生活能力に乏しいという特徴があります。
やがてルージンは若くて美しい女性と出会い、伝統に則って彼女の母親の方に、先に結婚の意志を伝えます。

チェス小説としても読めるし、一人の人間の軌跡としても読めます。
時代状況を反映してか、次第にルージンの精神が追い詰められていきますが、
彼が彼自身を守りきれるかどうかに物語がシフトしていきます。
彼の妻やその家族、作家である彼の父、悪友など、主人公以外の登場人物も個性が際立っていて生き生きとしています。






『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』ウラジーミル・ナボコフ

ナボコフとアイルランドに直接の結びつきはおそらくありませんが(ナボコフがジェイムズ・ジョイスに会ったというエピソードは確かあったと思います)、個人的に気に入っている作家の一人なので、読者が増えることを願って取り上げます。

語り手であるVは、腹違いの兄である作家セバスチャン・ナイトの伝記を書くために、
故人と縁のあった人たちを訪ね歩きます。

構成は、Vがセバスチャン・ナイトについて情報を集めている現在の場面と、
Vがセバスチャン・ナイトの思い出を語る回想の場面の二つに大きく分けられます。
それらが互いに絡み合いながら、少しずつセバスチャン・ナイトの人物が浮かび上がってきます。

同時に、Vの旅は、セバスチャンの最後の恋人であるニーナを探す旅でもあり、
彼女の正体が明らかになるまでは推理小説のようにも読めます。

全体的に読みやすい小説。にもかかわらず、細部にこだわるナボコフの記述は、この小説の密度を濃密なものにしています。



『見えない都市』イタロ・カルヴィーノ

マルコ・ポーロが、これまでに見てきた様々な都市の話をする。
だが、ヴェネツィアだけは語られることがない。
いつの日か彼の都市を訪れてみたいが、いつになるのだろう。


2012年2月1日

『日の名残り』カズオ・イシグロ


一人の執事が退職した女中頭に会いに行く道すがら、自分が仕えたダーリントン卿とその屋敷ダーリントン・ホールの往時の思い出を振り返る。
全体の構成が秀逸。
物語全体の時間の流れは緩やかで、執事の語り口は決して崩れることがない。
ブッカー賞受賞作。