2013年3月23日

『エレウテリア(自由)』 サミュエル・ベケット

パリ。
冬の連続する三日間の午後。
全三幕。

クラップ夫妻にはヴィクトールという息子がいる。
ヴィクトール・クラップは二年前に家を出て、下宿暮らしをしている。
彼は何事にも無気力無関心で、親や婚約者と距離を取っているが、
親からの金銭的援助だけは受け入れている。

ヴィクトールが下宿のガラスに靴を投げつけて割ってしまったので、子連れのガラス屋が修理にやって来る。
ガラス屋と、その他ヴィクトールを取り巻く人たちが、何故家を出て下宿に引き籠もっているのかとしつこく彼に尋ねる。
ヴィクトールは、自由になりたかったからだと答える。だから他人を捨てた。そして自分も捨てた。

ガラス屋親子の会話は笑えるし、他にも癖のある人物たちが出てくる。
父親が他界し、母親も病に臥してしまい、遺言書にはあなたには何も残されていなかったと婚約者から言われたヴィクトールが今後どのような生活を送っていくのか、それは語られずに幕が下りる。