シェイマス・ヒーニーの詩の一節より。
クロンマクノイズの修道院の上に、船が現れた。
錨が引っ掛かってしまったので、船が動けなくなってしまった。
船員がロープをつたって錨をはずそうとし、修道院の人々も手伝って船は再び動き出した。
という話。
The annals say: when the monks of Clonmacnoise
Were all at prayers inside the oratory
A ship appeared above them in the air.
The anchor dragged along behind so deep
It hooked itself into the altar rails
And then, as the big hull rocked to a standstill,
A crewman shinned and grappled down the rope
And struggled to release it. But in vain.
'This man can't bear our life here and will drown,'
The abbot said, 'unless we help him.' So
They did, the freed ship sailed, and the man climbed back
Out of the marvellous as he had known it.
2013年1月20日
『聖ケヴィンとクロウタドリ』 シェイマス・ヒーニー
運良く、シェイマス・ヒーニーの詩を学ぶ機会がありました。
取り上げられたのは、『聖ケヴィンとクロウタドリ』。庵から手を出しているとそこにクロウタドリがやって来て、手のひらの上に巣を作り卵を産むという話です。
アイルランド伝統音楽にBlackbirdという曲がありますが、その曲名はこの逸話に由来するのでしょうか。
St Kevin and the Blackbird
And then there was St Kevin and the blackbird.
The saint is kneeling, arms stretched out, inside
His cell, but the cell is narrow, so
One turned-up palm is out the window, stiff
As a crossbeam, when a blackbird lands
and Lays in it and settles down to nest.
Kevin feels the warm eggs, the small breast, the tucked
Neat head and claws and, finding himself linked
Into the network of eternal life,
Is moved to pity: now he must hold his hand
Like a branch out in the sun and rain for weeks
Until the young are hatched and fledged and flown.
*
And since the whole thing's imagined anyhow,
Imagine being Kevin. Which is he?
Self-forgetful or in agony all the time
From the neck on out down through his hurting forearms?
Are his fingers sleeping? Does he still feel his knees?
Or has the shut-eyed blank of underearth
Crept up through him? Is there distance in his head?
Alone and mirrored clear in Love's deep river,
'To labour and not to seek reward,' he prays,
A prayer his body makes entirely
For he has forgotten self, forgotten bird
And on the riverbank forgotten the river's name.
Seamus Heaney
取り上げられたのは、『聖ケヴィンとクロウタドリ』。庵から手を出しているとそこにクロウタドリがやって来て、手のひらの上に巣を作り卵を産むという話です。
アイルランド伝統音楽にBlackbirdという曲がありますが、その曲名はこの逸話に由来するのでしょうか。
St Kevin and the Blackbird
And then there was St Kevin and the blackbird.
The saint is kneeling, arms stretched out, inside
His cell, but the cell is narrow, so
One turned-up palm is out the window, stiff
As a crossbeam, when a blackbird lands
and Lays in it and settles down to nest.
Kevin feels the warm eggs, the small breast, the tucked
Neat head and claws and, finding himself linked
Into the network of eternal life,
Is moved to pity: now he must hold his hand
Like a branch out in the sun and rain for weeks
Until the young are hatched and fledged and flown.
*
And since the whole thing's imagined anyhow,
Imagine being Kevin. Which is he?
Self-forgetful or in agony all the time
From the neck on out down through his hurting forearms?
Are his fingers sleeping? Does he still feel his knees?
Or has the shut-eyed blank of underearth
Crept up through him? Is there distance in his head?
Alone and mirrored clear in Love's deep river,
'To labour and not to seek reward,' he prays,
A prayer his body makes entirely
For he has forgotten self, forgotten bird
And on the riverbank forgotten the river's name.
Seamus Heaney
『アルバート氏の人生』
アイルランドのダブリンが舞台の映画ということで気になっていた、『アルバート氏の人生』を観てきました。
19世紀のダブリン。ホテルのウェイターとして働いているアルバート・ノッブスは実直なウェイターとして周囲の信頼を得ている。しかし彼には秘密があり、実は男装をしている女性だった。
ある日ペンキ屋の男がホテルに仕事で訪れ、アルバートの部屋に泊まることになる。そしてアルバートの正体がばれてしまい、アルバートはペンキ屋にどうか秘密にしてほしいと懇願する。ペンキ屋はアルバートの頼みを受け入れるが、ペンキ屋にもまた秘密があった。
ほとんどホテルの従業員関係者のみで物語が進んでいきますが、お互いの人間関係が少しずつ明らかになっていくにつれ、喜怒哀楽の表現も増えていきます。
アルバートが男として生きていくに至った動機にはそれなりの説得力がありますが、しかし他の生き方もあったのではないかと思います。何故かくも酷な生き方を選んだのか、というのは医師の言葉ですが、まさにその通りで、結局のところどのような生き方を選択するのかはその時の状況と判断によるもので、その積み重ねで人は歳を重ねていくものなのでしょう。
スラムを歩いている場面では通りに並ぶカラフルな建物がアイルランドっぽいですが、それ以外はアイルランド的なものはあまり感じませんでした。例えばこれがイギリスが舞台の話だと言われれば自分はそう信じて疑わなかったと思います。とはいえ、ホテルの名前がモリソンズだったり、チフスが流行ったりするのはアイルランドの歴史・文化をふまえた設定と考えられます。
登場人物たちの造形はわかりやすく、ボイラーを修理した男とヘレンの関係はその成り行きが予想しやすいです。そこにアルバートが加わっても、アルバート自身が傷つくだけになってしまうのも、ストーリー上は必然的なものなのかもしれません。最後に得をしたのはホテルの女主人だけ。いつの世も、心の優しい人が幸せになるとは限らない。
追記:この映画の脚本に、作家のジョン・バンヴィルが関わっているようです。
19世紀のダブリン。ホテルのウェイターとして働いているアルバート・ノッブスは実直なウェイターとして周囲の信頼を得ている。しかし彼には秘密があり、実は男装をしている女性だった。
ある日ペンキ屋の男がホテルに仕事で訪れ、アルバートの部屋に泊まることになる。そしてアルバートの正体がばれてしまい、アルバートはペンキ屋にどうか秘密にしてほしいと懇願する。ペンキ屋はアルバートの頼みを受け入れるが、ペンキ屋にもまた秘密があった。
ほとんどホテルの従業員関係者のみで物語が進んでいきますが、お互いの人間関係が少しずつ明らかになっていくにつれ、喜怒哀楽の表現も増えていきます。
アルバートが男として生きていくに至った動機にはそれなりの説得力がありますが、しかし他の生き方もあったのではないかと思います。何故かくも酷な生き方を選んだのか、というのは医師の言葉ですが、まさにその通りで、結局のところどのような生き方を選択するのかはその時の状況と判断によるもので、その積み重ねで人は歳を重ねていくものなのでしょう。
スラムを歩いている場面では通りに並ぶカラフルな建物がアイルランドっぽいですが、それ以外はアイルランド的なものはあまり感じませんでした。例えばこれがイギリスが舞台の話だと言われれば自分はそう信じて疑わなかったと思います。とはいえ、ホテルの名前がモリソンズだったり、チフスが流行ったりするのはアイルランドの歴史・文化をふまえた設定と考えられます。
登場人物たちの造形はわかりやすく、ボイラーを修理した男とヘレンの関係はその成り行きが予想しやすいです。そこにアルバートが加わっても、アルバート自身が傷つくだけになってしまうのも、ストーリー上は必然的なものなのかもしれません。最後に得をしたのはホテルの女主人だけ。いつの世も、心の優しい人が幸せになるとは限らない。
追記:この映画の脚本に、作家のジョン・バンヴィルが関わっているようです。
2013年1月14日
『アイルランド紀行』 栩木伸明
アイルランドの歴史・文化・風土などがコンパクトにまとめられた新書。
アイルランド入門といった趣の本です。一章一章が短いので読みやすいですし、どの賞から読んでも大丈夫な章立てになっています。
アイルランド入門といった趣の本です。一章一章が短いので読みやすいですし、どの賞から読んでも大丈夫な章立てになっています。
『アイルランド現代詩は語る』 栩木伸明
アイルランド関係で著作・翻訳の多い栩木伸明先生の本。
アイルランドで詩人といえば、W・B・イェイツとシェイマス・ヒーニーくらいしか知りませんでしたが、この本では日本ではあまり知られていない現代アイルランドの詩人たちとその作品を紹介しています。
詩人たちの創作の背景にある歴史・環境を解説しながら詩を紹介していく語り口は親しみやすいです。
この本をきっかけとして、初めて名前を知った詩人たちの作品をこれから読んでいくのもいいのではないでしょうか。
取り上げらた詩人たち
テオ・ドーガン
パット・ボラン
ポーラ・ミーハン
トマス・マッカーシー
グレッグ・ディランディ
ヌーラ・ニー・ゴーノル
カハル・オー・シャーキー
ミホール・オシール
キアラン・カーソン
メーヴ・マガキアン
ジェラルド・ドウ
アイルランドで詩人といえば、W・B・イェイツとシェイマス・ヒーニーくらいしか知りませんでしたが、この本では日本ではあまり知られていない現代アイルランドの詩人たちとその作品を紹介しています。
詩人たちの創作の背景にある歴史・環境を解説しながら詩を紹介していく語り口は親しみやすいです。
この本をきっかけとして、初めて名前を知った詩人たちの作品をこれから読んでいくのもいいのではないでしょうか。
取り上げらた詩人たち
テオ・ドーガン
パット・ボラン
ポーラ・ミーハン
トマス・マッカーシー
グレッグ・ディランディ
ヌーラ・ニー・ゴーノル
カハル・オー・シャーキー
ミホール・オシール
キアラン・カーソン
メーヴ・マガキアン
ジェラルド・ドウ
2012年12月9日
ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の思い出
自分がアイルランドに興味を持つようになった最初のきっかけは何だったのか、と考えた時、記憶の糸をたどっておぼろげに浮かんできたのは、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』でした。
新聞に集英社版『ユリシーズ』の広告が載っているのを見たのは今でも覚えています。1996年から翌年にかけて刊行されたということですから、丁度自分が高校生の頃でした。
98年頃、予備校の帰りに大きい本屋の海外文学のコーナーで手に取って、最初の方を読んでみたこともありました。しかし、ダブリンが舞台という以外は中身も知らない一冊四千円以上する本を3冊も買う勇気はありませんでした(お金もありませんでしたが)。
にもかかわらず、何故か『ユリシーズ』はその後も自分の頭の中に残り続けていました。
タイトルと作者の組み合わせが持つ言葉の音の響きに、何か惹きつけられるものがあったし、今でもあります。
集英社版が文庫になった時も、興味はありましたが、すぐには買いませんでした。しばらくして古本屋で見かけた時にようやく買いました。そしてその後は本棚に置いたままになって今に至ります。
ここ数年、多少なりともアイルランドに興味を持つようになって日々を過ごしていますが、その最初のきっかけになったと思しき『ユリシーズ』を、そろそろ読み始めようと思いました。
挿話を一つずつ読んで、メモを残す形で読んでいきたいと考えています。
新聞に集英社版『ユリシーズ』の広告が載っているのを見たのは今でも覚えています。1996年から翌年にかけて刊行されたということですから、丁度自分が高校生の頃でした。
98年頃、予備校の帰りに大きい本屋の海外文学のコーナーで手に取って、最初の方を読んでみたこともありました。しかし、ダブリンが舞台という以外は中身も知らない一冊四千円以上する本を3冊も買う勇気はありませんでした(お金もありませんでしたが)。
にもかかわらず、何故か『ユリシーズ』はその後も自分の頭の中に残り続けていました。
タイトルと作者の組み合わせが持つ言葉の音の響きに、何か惹きつけられるものがあったし、今でもあります。
集英社版が文庫になった時も、興味はありましたが、すぐには買いませんでした。しばらくして古本屋で見かけた時にようやく買いました。そしてその後は本棚に置いたままになって今に至ります。
ここ数年、多少なりともアイルランドに興味を持つようになって日々を過ごしていますが、その最初のきっかけになったと思しき『ユリシーズ』を、そろそろ読み始めようと思いました。
挿話を一つずつ読んで、メモを残す形で読んでいきたいと考えています。
ミス・マクロードのリール(ジョイス『ダブリナーズ』の『土くれ』)
ジョイスの『ダブリナーズ』に『土くれ』という話があります。
その『土くれ』の中に、「ドネリー夫人がミス・マクロードのリールを伴奏して子供たちがダンスをし、ジョウはマライアにワインをすすめた」という文章があります。
ここに出てくるミス・マクロードのリールとはどんな曲なのか。
一読した時は気にしませんでしたが、私の持っている文庫本には楽譜も載っているので、
調べて見ました。
以下の曲です。
ハープ演奏なので、綺麗めに聞こえます。
その『土くれ』の中に、「ドネリー夫人がミス・マクロードのリールを伴奏して子供たちがダンスをし、ジョウはマライアにワインをすすめた」という文章があります。
ここに出てくるミス・マクロードのリールとはどんな曲なのか。
一読した時は気にしませんでしたが、私の持っている文庫本には楽譜も載っているので、
調べて見ました。
以下の曲です。
ハープ演奏なので、綺麗めに聞こえます。
『フェリシアの旅』 ウィリアム・トレヴァー
ウィリアム・トレヴァーの長編小説です。
17歳のフェリシアは、連絡先を伝えずにイギリスに行ってしまった恋人のジョニーを追って、アイルランドからバーミンガムへやって来ます。
芝刈り機の工場で働いているとジョニーが言っていたので、その方面で彼を探しますが、ジョニーは見つかりません。
そんな時、フェリシアに声をかける人物、ヒルディッチ氏が現れます。
ヒルディッチ氏は工場の社員食堂の経営者で、豪邸に住む独り者です。彼はフェリシアの助けになりたいと申し出、ジョニーのいそうな工場を探す手伝いをします。
しかしジョニーは見つからないので、フェリアシアはヒルディッチ氏の厚意により、彼の邸宅で宿を取ることになります。
善良な人物を装っているヒルディッチ氏ですが、彼には、これまでに何人もの家出娘に助けるふりをして近づき、そして殺してきたという過去があります。
果たしてフェリシアの運命はどうなるのか。
物語の筋だけを見ればそれほど複雑な話ではないですが、細部に対するこだわりが強い作家なので、フェリシアとヒルディッチ氏を取り巻く人たちが、思いの外、数多く出てきます。一人一人がそれぞれ癖のある人物として描かれているので、ボリュームの大きい、読み応えのある小説になっています。
映画にもなっているようです。
17歳のフェリシアは、連絡先を伝えずにイギリスに行ってしまった恋人のジョニーを追って、アイルランドからバーミンガムへやって来ます。
芝刈り機の工場で働いているとジョニーが言っていたので、その方面で彼を探しますが、ジョニーは見つかりません。
そんな時、フェリシアに声をかける人物、ヒルディッチ氏が現れます。
ヒルディッチ氏は工場の社員食堂の経営者で、豪邸に住む独り者です。彼はフェリシアの助けになりたいと申し出、ジョニーのいそうな工場を探す手伝いをします。
しかしジョニーは見つからないので、フェリアシアはヒルディッチ氏の厚意により、彼の邸宅で宿を取ることになります。
善良な人物を装っているヒルディッチ氏ですが、彼には、これまでに何人もの家出娘に助けるふりをして近づき、そして殺してきたという過去があります。
果たしてフェリシアの運命はどうなるのか。
物語の筋だけを見ればそれほど複雑な話ではないですが、細部に対するこだわりが強い作家なので、フェリシアとヒルディッチ氏を取り巻く人たちが、思いの外、数多く出てきます。一人一人がそれぞれ癖のある人物として描かれているので、ボリュームの大きい、読み応えのある小説になっています。
映画にもなっているようです。
2012年8月27日
ディパーテッド
こちらもアイルランド系マフィアが出てくる映画です。
アカデミー賞を受賞したことで有名ですが、ジャック・ニコルソンの演技と、最後のたたみかけるような展開が印象深いです。
劇中に流れる音楽も、いい曲ですね。
以下の動画の音楽です。
アカデミー賞を受賞したことで有名ですが、ジャック・ニコルソンの演技と、最後のたたみかけるような展開が印象深いです。
劇中に流れる音楽も、いい曲ですね。
以下の動画の音楽です。
ロード・トゥ・パーディション
アメリカが舞台の映画ですが、アイルランド系マフィアの話なので、
アイリッシュな音楽が劇中に流れるシーンがあったような記憶があります。
後は、会話の中でアイルランドという単語が出てきました。
主人公のサリバンという名前もアイルランド系のよくある名前ですね。
結構気に入っている映画です。ジュード・ロウの演じる殺し屋がいい味を出しています。
登録:
投稿 (Atom)