2012年3月8日

『アイルランド・ストーリーズ』 ウィリアム・トレヴァー

アイルランドの作家ウィリアム・トレヴァーによる短篇集。
『聖母の贈り物』の時と同じく十二篇が収められている。
今回の本では、アイルランドが舞台の話が多く、歴史的な出来事に関する記述も多くあり、
中身の濃い短篇集になっている。

『女洋裁師の子供』
カハルはスペイン人の観光客を車に乗せて、涙を流すという路傍の聖母像へ案内する。
その帰り道、カハルの身にアクシデントが起きる。

『キャスリーンの牧草地』
ハガーティーは牧草地を手に入れるため、末娘のキャスリーンを知り合いの家に女中奉公に出す。キャスリーンは奉公先で、自分が育ったのとは異なる水準の生活様式で暮らす人々に仕えることになる。

『第三者』
ボーランドにはアナベラという妻がいるが、彼女は浮気をしていた。
ボーランドは妻の浮気相手であるレアードマンに会って話をすることになる。

『ミス・スミス』
ミス・スミスは女教師である。彼女の生徒にジェイムズという少年がいるが、彼女はこの少年のことを快く思っていない。
やがてミス・スミスは結婚退職して、子供が生まれる。
ジェイムズ少年は庭の草刈りをしに来た男から、自分の行動指針について助言を得る。

『トラモアへ新婚旅行』
デイビーとキティーは新婚夫婦である。旅行先での会話から過去の記憶が甦り、
デイビーはキティーの真意を知ることになる。

『アトラクタ』
年老いた女教師アトラクタは、現実に起きている事件に思いを馳せ、
生徒たちに自分の思うところを語ることにした。

『秋の陽射し』
モラン牧師には四人の娘がいた。末娘のディアドリはイギリスに行ったまま音沙汰がなかったが、
ある日手紙が届いて牧師の元を訪れるという。帰ってきた末娘は男を連れていて、その男はアイルランドを賛美するイギリス人だった。

『哀悼』
リアム・パットは、自分は田舎暮らしで終わる人間ではないと考えてロンドンへ出る。
だが仕事は思うようにいかない。いろいろと面倒を見てもらっていた人に囲まれながら何とかやっていたが、田舎へ帰ることにしたと彼らに伝えると、リアムは一つの仕事を依頼される。

『パラダイスラウンジ』
不倫関係にある男女と、それを眺めて自分の若い頃を回想する老女。

『音楽』
ジャスティンは少年の時に近所のロウチおばさんと知り合いになり、彼女のすすめでピアノを習い始める。ピアノを教えてくれるのはフィン神父だった。

『見込み薄』
ミセス・キンケイドは、事件のほとぼりが冷めるまで旅をすることにした。
彼女は旅先の軽食堂で、ブレイクリーという男と相席になる。


『聖人たち』
アイルランドを離れてイタリアで暮らしていた「わたし」は、かつて「わたし」の家でメイドをしていた女性であるジョセフィンが危篤状態であるとの連絡を受ける。アイルランドへ戻って、「わたし」はジョセフィンと再会する。


アイルランド・ストーリーズ
アイルランド・ストーリーズ