ナボコフとアイルランドに直接の結びつきはおそらくありませんが(ナボコフがジェイムズ・ジョイスに会ったというエピソードは確かあったと思います)、個人的に気に入っている作家の一人なので、読者が増えることを願って取り上げます。
語り手であるVは、腹違いの兄である作家セバスチャン・ナイトの伝記を書くために、
故人と縁のあった人たちを訪ね歩きます。
構成は、Vがセバスチャン・ナイトについて情報を集めている現在の場面と、
Vがセバスチャン・ナイトの思い出を語る回想の場面の二つに大きく分けられます。
それらが互いに絡み合いながら、少しずつセバスチャン・ナイトの人物が浮かび上がってきます。
同時に、Vの旅は、セバスチャンの最後の恋人であるニーナを探す旅でもあり、
彼女の正体が明らかになるまでは推理小説のようにも読めます。
全体的に読みやすい小説。にもかかわらず、細部にこだわるナボコフの記述は、この小説の密度を濃密なものにしています。
0 件のコメント:
コメントを投稿