2013年1月14日

『アイルランド紀行』 栩木伸明

アイルランドの歴史・文化・風土などがコンパクトにまとめられた新書。
アイルランド入門といった趣の本です。一章一章が短いので読みやすいですし、どの賞から読んでも大丈夫な章立てになっています。

『アイルランド現代詩は語る』 栩木伸明

アイルランド関係で著作・翻訳の多い栩木伸明先生の本。
アイルランドで詩人といえば、W・B・イェイツとシェイマス・ヒーニーくらいしか知りませんでしたが、この本では日本ではあまり知られていない現代アイルランドの詩人たちとその作品を紹介しています。
詩人たちの創作の背景にある歴史・環境を解説しながら詩を紹介していく語り口は親しみやすいです。
この本をきっかけとして、初めて名前を知った詩人たちの作品をこれから読んでいくのもいいのではないでしょうか。

取り上げらた詩人たち

テオ・ドーガン
パット・ボラン
ポーラ・ミーハン
トマス・マッカーシー
グレッグ・ディランディ
ヌーラ・ニー・ゴーノル
カハル・オー・シャーキー
ミホール・オシール
キアラン・カーソン
メーヴ・マガキアン
ジェラルド・ドウ



2012年12月9日

ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の思い出

自分がアイルランドに興味を持つようになった最初のきっかけは何だったのか、と考えた時、記憶の糸をたどっておぼろげに浮かんできたのは、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』でした。
新聞に集英社版『ユリシーズ』の広告が載っているのを見たのは今でも覚えています。1996年から翌年にかけて刊行されたということですから、丁度自分が高校生の頃でした。
98年頃、予備校の帰りに大きい本屋の海外文学のコーナーで手に取って、最初の方を読んでみたこともありました。しかし、ダブリンが舞台という以外は中身も知らない一冊四千円以上する本を3冊も買う勇気はありませんでした(お金もありませんでしたが)。
にもかかわらず、何故か『ユリシーズ』はその後も自分の頭の中に残り続けていました。
タイトルと作者の組み合わせが持つ言葉の音の響きに、何か惹きつけられるものがあったし、今でもあります。
集英社版が文庫になった時も、興味はありましたが、すぐには買いませんでした。しばらくして古本屋で見かけた時にようやく買いました。そしてその後は本棚に置いたままになって今に至ります。

ここ数年、多少なりともアイルランドに興味を持つようになって日々を過ごしていますが、その最初のきっかけになったと思しき『ユリシーズ』を、そろそろ読み始めようと思いました。
挿話を一つずつ読んで、メモを残す形で読んでいきたいと考えています。


ミス・マクロードのリール(ジョイス『ダブリナーズ』の『土くれ』)

ジョイスの『ダブリナーズ』に『土くれ』という話があります。
その『土くれ』の中に、「ドネリー夫人がミス・マクロードのリールを伴奏して子供たちがダンスをし、ジョウはマライアにワインをすすめた」という文章があります。
ここに出てくるミス・マクロードのリールとはどんな曲なのか。
一読した時は気にしませんでしたが、私の持っている文庫本には楽譜も載っているので、
調べて見ました。
以下の曲です。
ハープ演奏なので、綺麗めに聞こえます。




『フェリシアの旅』 ウィリアム・トレヴァー

ウィリアム・トレヴァーの長編小説です。
17歳のフェリシアは、連絡先を伝えずにイギリスに行ってしまった恋人のジョニーを追って、アイルランドからバーミンガムへやって来ます。
芝刈り機の工場で働いているとジョニーが言っていたので、その方面で彼を探しますが、ジョニーは見つかりません。
そんな時、フェリシアに声をかける人物、ヒルディッチ氏が現れます。
ヒルディッチ氏は工場の社員食堂の経営者で、豪邸に住む独り者です。彼はフェリシアの助けになりたいと申し出、ジョニーのいそうな工場を探す手伝いをします。
しかしジョニーは見つからないので、フェリアシアはヒルディッチ氏の厚意により、彼の邸宅で宿を取ることになります。
善良な人物を装っているヒルディッチ氏ですが、彼には、これまでに何人もの家出娘に助けるふりをして近づき、そして殺してきたという過去があります。
果たしてフェリシアの運命はどうなるのか。

物語の筋だけを見ればそれほど複雑な話ではないですが、細部に対するこだわりが強い作家なので、フェリシアとヒルディッチ氏を取り巻く人たちが、思いの外、数多く出てきます。一人一人がそれぞれ癖のある人物として描かれているので、ボリュームの大きい、読み応えのある小説になっています。

映画にもなっているようです。










2012年8月27日

ディパーテッド

こちらもアイルランド系マフィアが出てくる映画です。
アカデミー賞を受賞したことで有名ですが、ジャック・ニコルソンの演技と、最後のたたみかけるような展開が印象深いです。






劇中に流れる音楽も、いい曲ですね。
以下の動画の音楽です。



ロード・トゥ・パーディション

アメリカが舞台の映画ですが、アイルランド系マフィアの話なので、
アイリッシュな音楽が劇中に流れるシーンがあったような記憶があります。
後は、会話の中でアイルランドという単語が出てきました。
主人公のサリバンという名前もアイルランド系のよくある名前ですね。
結構気に入っている映画です。ジュード・ロウの演じる殺し屋がいい味を出しています。






2012年8月26日

『海に帰る日』

ブッカー賞受賞作。
この時の他の候補作に、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』があったというのは、
この本の受賞がとても意義深いものに感じられます。
原題は、The sea 。読みやすい文章でもないし、泣ける話でもありません。
言葉と文章に対するこだわりの強い作家なので、それらを愉しむつもりで読むのがいいかもしれません。


『無限』

ジョン・バンヴィルの割と最近の小説。
語り手が神であるヘルメスなので、文字通り神の視点で描かれていきます。
登場人物たちの中では神であるゼウスが一番の存在感を持っているような印象でした。
文章の密度は濃いです。



『ダブリンで死んだ娘』

ジョン・バンヴィルがベンジャミン・ブラック名義で書いたミステリー。
アイルランドとアメリカが主な舞台で、相互を行き来します。
内容に関しては、可もなく不可もなく、といったところでしょうか。
バンヴィル名義の小説に比べると物足りなさを感じるかもしれません。