2012年1月22日

『聖なる酔っぱらいの伝説』ヨーゼフ・ロート


『聖なる酔っぱらいの伝説』

炭坑夫としてパリにやってきたアンドレアスは、いつしかセーヌ川の橋の下で暮らしていた。
アンドレアスは酒飲みである。
ある日、偶然に金を手に入れる。それを使う。また偶然によって金を手に入れる。やはり使う。
いいことがあったら酒を飲み、つらいことがあると酒を飲み、何もなくても酒を飲む。
偶然の幸運に導かれるようにして、彼は最後を迎える。

『四月、ある愛の物語』

町にやって来た男が女と同棲する。
男は郵便局長の家の二階の窓辺に立つ娘に恋をする。
同棲している女から、娘は病気で余命幾ばくもないと聞かされる。
男は町を出て行くことにする。
駅で男は窓辺の娘と会う。
間近に見る娘はいかにも健康そうだった。
その足で男はニューヨークへ行った。

『皇帝の胸像』

オーストリア帝国領東ガリシアにモルスティン伯爵なる人物がいた。
戦争が終わり、帝国は解体され、東ガリシアはポーランド領になる。
モルスティン伯爵は、東ガリシアは依然帝国領であると考える。
彼は屋敷の前に皇帝の胸像を飾る。
政府により胸像の撤去命令が下る。
モルスティン伯爵は胸像を丁重に葬る。

物語中の出来事を淡々と要約しただけではわからないですが、
作者は生のよろこびを書いていると思われます。
同時に、解説にもあるように、そのよろこびを信じていないです。
これらの小説は黄昏という言葉を連想させます。




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